「セバスチャン、変な所はないか?」


朝から露出は苦手なのにと文句を言われ、ご機嫌斜めではありましたがスタジオに着き控室へ入ればソワソワしだして鏡と睨めっこを繰り返されるシエル。


「はい!360度どの角度から見ても完璧ですよ!とても、素晴らしいです!!」


私の言葉を聞き安心するシエルの可愛いらしさといったら…嗚呼、この場が寝室なら確実に押し倒していますのに!





「Newlyweds!A」





私の葛藤は本番直前まで続きましたが、なんとか耐える事が出来ました。
スタッフの方に呼ばれシエルと共にスタジオへ移動するも、シエルは余程緊張しているのか私の手を握り締めてきました!


「シエル?」
「…き、緊張して…上手く歩けないから……それに、安心するから…手、繋ぎたい…」


嗚呼、この初々しさに万歳!グッジョブ私!!
出演する事を必死に頼み込んで良かったです。シエルの姿を見ていて自分を褒めたい気持ちになりました。


「さぁ、シエル行きましょうか。段差があるのでお気をつけ下さいね?」


音楽が鳴ると同時にスタッフの合図があり前へと進み、司会者へ挨拶すると向かいにある椅子へ座るもシエルは立ち尽くしたままで…余程、緊張されているのですね。


「シエル、座って大丈夫ですよ。カメラの事は意識せず、いつもの貴方で…」


立ち尽くしたままのシエルに小声で話し掛ければ慌てて座り、俯いています。
まさか、これ程までに緊張されるとは思いもしなかった為…少し、可哀相になってしまいました。


「先ずは、自己紹介からどうぞ!」


司会者の方から自己紹介するようにと言われるとビクッとシエルの肩が跳ね上がり、安心させようと手をギュッと握り締めて差し上げました…嗚呼、食べてしまいたい!
まぁ、流石にこの場で押し倒したりしたら一生、嫌われそうなので我慢しますが…


「私は、セバスチャン・ミカエリスです。年齢は…秘密です。職業は執事です」


会釈をしながら答え、シエルも自己紹介するようにと肩を軽く叩いて促せば耳まで真っ赤にして消え入りそうな小さな声で話して下さいましたが…残念ながら、マイクがシエルの声を拾えてません。
私の耳にはちゃんと聞こえてますけどね!マイクごときに負けるわけがありません!!


「彼はシエル・ファントムハイヴ。年齢は13歳で職業は玩具メーカーの社長であり、私の御主人様でもあります」


にっこりと笑みを向けて話せば司会者の方は何故だか驚かれているご様子…
何か問題発言でもしましたかね?


「…彼、本当に13歳なんですか?本当なら貴方、犯罪者じゃないですか」
「いえ、私はあくまで執事ですから」


私が最高の笑顔を浮かばせながら即答すれば周りはシーンと静まりかえってしまいました…おやおや、放送事故扱いされてしまいますよ?生放送でなくて良かったですねぇ。


「…え、あ……僕!こう見えて20歳なんです…セバスチャン、僕を永遠の13歳だと…ははは……」


突然の言葉に私は驚き、シエルへ視線を移すと同時に足を思い切り踏まれました…黙っていろという合図ですね。
しおらしい姿も素敵ですが、やはり気の強い方がシエルらしい。


「驚かさないで下さいよー、セバスチャンさんが真顔で言うから皆驚いたじゃないですか!」


私は嘘は言いませんのに…不満に思うもシエルからの「黙っていろ」という痛いぐらいの視線に黙るしかありませんでした。


「さっき、職業の時に執事と御主人様と言われてましたが…出会いはやはり職場ですか?」
「あ、違いますよ。シエルとの出会いは儀式で悪魔を召喚ふがっ!」
「セバスチャンは少し妄想癖があって…すみません」


シエル…酷いです。
クッションが顔へ勢い良く押し付けられたせいで整えた髪型が崩れてしまったじゃないですか…しかも、素敵な運命の出会いを妄想で片付けられてしまいました…


「セ、セバスチャンさんはユーモアのある人なんですね…」


司会者の方もきっと聞きたかった筈ですのに…残念です。


「お二人の付き合いだした経緯は?」


フフ、今まで途中で止められた分を此処で発揮させて頂こうではありませんか!


「それは勿論、私が空腹から我慢出来ずに無理矢理押し倒してしまった事から始まりですね、味を占めてしまった私は毎夜シエルの部屋へ夜這いに…そして、私はシエルを抱く内にそれは空腹を満たす為ではなく愛だと感じたのです!そして、告白したものの中々シエルには受け入れてもらえず…毎日が盗撮、視姦、シエルの使用済み物の回収でした……ですが、やっとシエルは私の気持ちを受け入れて下さり無事交際がスタート致しました」


おや、またシーンとなってしまいましたね…少し興奮気味に話してしまったからでしょうか?
隣のシエルへ視線を向ければ呆れたように私を見つめていました。


「私、何かやらかしました?」
「やらかし過ぎて…フォローする暇もなかった…」



撮影は何故だか途中で中止となり、スタジオから出て行く際にはシエルがスタッフ達や司会者の方から励まされていました。


「全く、何がいけなかったのか…ありのままをお話ししようとしただけですのに……」


折角、私とシエルの新婚記念になると思いましたのに…


「セバスチャン、待て!僕を置いて帰るつもりか?」


私の元へと駆け寄ってきたシエルへ視線を向ければ溜息をつかれてしまいました…


「全く、貴様は馬鹿か…馬鹿正直に答えて……」
「ですが、本当の事を言いたくて……私にはシエルとの素晴らしい思い出の数々なのです…」
「…分かったから、そんな顔するな。ほら、スタッフが参加の記念にとくれた物だ」
「おや…これは!」


シエルから手渡された袋を開ければ、中にはYES・NO枕が入っていました。


「撮影は中止になったが…僕はセバスチャンと過ごせる事が幸せだから……別に、記念とか必要ない…」
「シエルっ!」


なんて可愛いらしいのでしょう!
可愛いらしさに我慢出来ず、シエルを抱き上げると急いでマイホームへと光速の速さで帰宅致しました。


「あ!シエル、折角ですし先程スタッフの方から頂いた枕を使いましょう!」


着いて直ぐに寝室へと直行し、ベッドにシエルを押し倒しているのですが…恥ずかしそうにYES枕を私へ向ける姿が見たいと思った私はシエルへ袋ごと渡しました。


「…さぁ、YESまくぶふぉっつ!」
「NO!に決まっているだろ…全く、雰囲気をぶち壊して……昨日の躾だけでは足りなかったみたいだな!」


ベッドの上に仁王立ちして私を見下ろすシエル…確かにがっつき過ぎたのは認めますがシエル不足なのです。
控室の時からずっとムラムラしてるんですから!


「…っ、シエルー…」
「……夜まで待てれば…YES枕にするから…我慢しろ」
「シエルーっつ!大好きです!!」


嬉しくてシエルに飛び付けば重い苦しいと怒鳴られてしまいましたが…夜までお預けなので今の内にシエル補給です。


「シエル、有り難うございます…スタジオでの言葉、とても嬉しかったですよ」
「……何を言ったか忘れたな…」


照れくさいのかベッドの傍にある棚から本を取り出して読むシエル。


「ねぇ、シエル…私もシエルと一緒に居られるだけでとても幸せですよ」
「…そうか」


素っ気ない返答ですが声色から嬉しいという感情が伺え、私の表情は緩みそうになってしまいます。


「シエルは…幸せですか?」
「………幸せに決まっているだろ…分かりきった事を聞くな馬鹿…早く、おやつを持ってこないと夜もNO枕を投げ付けるぞ!」
「フフ、有り難うございますシエル。愛するシエルの為に頑張って作ってきますからね!」



新婚記念にテレビ出演し、思い出を作ろうと思いましたが…毎日が思い出なのですから私達には必要なさそうですね。





end...

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「Happy Wedding」という素晴らしい参加させて頂き有り難うございました。新婚、実に素晴らしい企画であります!!
新婚=某番組でして…参加させて頂く事になってから私は某番組ネタを使おう!と思っていました。
ただ、書き終えてから心配になった事がありまして…某番組って関西だけじゃないですよ…ね?
関西弁は苦手な方がいらっしゃるかもと思い標準語ですが、実際の某番組では司会者の方はばりばりの関西弁です。

最後まで読んで下さり有り難うございました。