私と坊ちゃんがお忍びで結婚し、早いものでもう六ヶ月という月日が経とうとしています。
幸せな日々が続くと月日が経つのは本当に早いものです…そこで、私は過ぎていく日々を特別なものにしようと色々と考えていました。
特別なものにする為にはと悩んでいたのですが、ある日偶然テレビを見た時にその方法を見付ける事が出来ました。
その方法を実行するにはまず、マイラブリーハニーに相談です!





「Newlyweds!@」





「坊ちゃ…いえ、マイラブリーハニーシエル!折り入ってお願いがあるのですが…聞いて下さいますか?」


お願いを快諾して頂く為にと用意しておいたフルーツタルトを差し出しながら尋ねかけるも何故だか睨みつけられてしまい、不思議に思い首を傾げれば溜息…私、何か仕出かしたのでしょうか?
不機嫌ですと了承どころか話しをまず聞いて頂く事が難しいのです…困りましたね。


「あの…私、気付かない内に何か仕出かしてしまいましたか?」


様子を伺いながら尋ねかければ可愛いらしい口から深い溜息が漏れ出しました。


「…その、長ったらしい呼び方で僕を呼ぶのを止めろ。何がラブリーハニーだ、変な名前をつけるな……それを止めたら話しを聞いてやる」


嗚呼、機嫌が悪いのかと思っていましたが…照れていたのですね!
良く見てみるとお顔がほんのり赤みを帯びていました。
触れたい吸い付きたいという願望を必死に堪えるのが大変です。


「フフフ、マイハニーは照れ屋さんですねぇ…」
「照れてない!あー、もう…シエルで良い!これからは…その、シエルと呼べ…」
「おや、名前で呼ばれたいのですか?」
「…っ!う、うるさいっ!!」


おやおや、名前で呼ばれたいというのは図星でしたか。
坊ちゃん…いえ、シエルは本当に可愛いらしい。私は世界一だけではなく魔界一の幸せ者です。


「セバスチャン、早く用件を言え!僕は暇じゃないんだぞ!」


喜びに浸っていると用件を言うようにと催促されてしまいました。
シエルってば、せっかちさんなんですから…ですが、そんな所も愛おしいですけど!
フフ、惚気てしまいました…が、そろそろ言わないとご機嫌ななめになるのでお話ししましょう。


「シエルにお願いしたい事がありまして…人間界の長寿番組にシエルと共に出演したいのです。結婚してから三年以内の夫妻が対象で…その番組に出るのは今しかないのです!」
「別に今でなくても良いじゃないか…まだ半年経ったばかりだろう?」


結婚してから半年経ったと覚えて下さっていた事に感動しましたが…絆されては駄目です。


「悪魔の三年は早いのです…本当にあっという間に過ぎてしまうのですよ?」
「面倒だし家でケーキでも食べながらその番組を見ている方が良い」
「シエル、所帯じみたことを言わないで下さいよ!まだ新婚ですよ?シエルは私の新妻なのですよ?」


まさかの即答。
まぁ、アクティブな方ではありませんしメディア露出されるのも苦手ですからね…断られる覚悟はしていましたが即答ですと説得出来るか不安になって参りました……
ですが、どうしても今回ばかりは譲れないのです!


「シエル、お願いします…どうしても貴方と出演したいのです……私に新婚の喜びを思い出として残させて下さいませんか?私…今まででこんなにも幸せを感じたのは初めてなのです……どうしても駄目ですか?私の滅多にない願いを聞いて下さいませんか?」


真剣に語りかければ私の勢いにたじろぐシエル。
シエルはなんだかんだで私に弱い…本当に可愛いらしいですねぇ。


「分かった…出る……出れば良いんだろう……」
「シエルー!有り難うございます!有り難うございます!大好きです!!」
「だ、抱き着くな馬鹿…」


これで無事シエルと共に出演する事が出来ます!
駄目元でも言ってみるものですね。


「だが、出演するには応募が必要なんじゃないか?」
「あ、ご心配には及びません!既に出演出来るように手は打っていますから!」
「…え?」


出演出来るようにと応募し、見事勝ち取ったハガキを胸ポケットから出して誇らしげにシエルへ見せれば「騙された」と呟きが聞こえましたが気にしません!
悪魔たる者、欲求には忠実に!尚且つ、用意周到に!ですよ。


「あ、シエルシエル!明日に出演予定なのでお願いしますね!」


疲れたと言われ自室へ戻ろうとするシエルに重要な事をお伝えし忘れていたので追い掛けて話したわけですが…振り向いたシエルの顔は……それはもう、とても怖いお顔でした。


「…なっ!あ、明日だと!?貴様、ふざけるな!新婚だからと甘くみていたら…躾直す必要があるみたいだな!」
「あ、あの…明日はテレビ出演で…その、出来るだけ顔は止めて頂けると有り難いのですが…」
「黙れ、問答無用だ!この…あっ、待て!逃げるなセバスチャン!!」
「シ、シエル!ストップストップ!落ち着いて下さいーっ!!」


その後、私はシエルからの愛の鞭に打たれたりと大変な思いをしました…自業自得なのは承知ですけどね。





「ふぅ…、シエルの女王様気質は健在なのですね」
「そう言うお前も変態気質は健在じゃないか。鞭打ちで気持ち良さそうな顔をしていたぞ?」


眠っていると思っていたシエルが目を開けて私へ苦笑い混じりに話す…確かに、少し感じましたけどね。


「気のせいですから!私、感じていませんよ!!」
「そうか?」
「気のせいと言ったら気のせいです!それより早く眠って下さい、明日は早いですし…早く眠って下さらないとシエルがこんなに近くにいるので私、ムラムラしてしまいます」
「お、おやすみっ!もし、寝ている間に変な事をしたら出演するという話しは無しにするからな!」
「そんなに慌てなくても…少し傷付きます」


私に背を向けてしまうシエルに苦笑い混じりに呟き、眠りやすいようにとシエルの頭を撫でれば暫くするとスースーと可愛いらしい寝息が聞こえてきました。

バタバタしましたが無事、出演へと漕ぎ着く事が出来き一安心です。
明日の為にも私も準備をしなくてはいけないので名残惜しいですが、シエルから離れ洋服を選んでいきました。


「シエル、明日は全国のお茶の間の皆様に私とシエルのイチャイチャっぷりを見せ付けましょうね?」
「んー…んぅ……」



世界一幸せな新婚さんは私達に決まっています!


「あ、そういえば…出会いのきっかけや結婚生活に至るまでのエピソードを語る事をシエルからの躾を受けていたせいですっかり伝え忘れていましたね…また怒られてしまいますかねぇ……明日は覚悟しておかなくては…」



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