夜。 いつものように入浴の手伝いをして、 いつものように、その白い肌にナイティーを着させた。 「坊ちゃん、就寝前に聞いて頂きたい事があるのですが…宜しいでしょうか?」 甘い声でそう尋ねれば、可愛らしく首を傾げる恋人。 「坊ちゃん・・・いえ、シエル」 名前で呼べば、恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに微笑む恋人。 嗚呼…本当に可愛らしい。 その恋人に啄むようなキスを送ると、擽ったそうにしながらも必死に受け入れている。 この瞬間が永遠に続けば良いと思う。 時間が止まってしまえば良いと本気で思う。 永遠の時を過ごしている悪魔の私が。 この人の全てを手に入れたい。 魂だけではなく、その身体も心も何もかも。 蒼く美しく光る瞳を真っ直ぐ捕らえる。 この瞳に映るのが私だけであって欲しい。 他の者など見ないで。 私だけ 私だけを 嗚呼・・・本当に・・・。 契約だけの関係だった筈なのに、 こんなにも貴方に惹かれ執着し、 こんなにも掻き乱されて こんなにも簡単に悪魔である私が崩れていく。 「私と一緒に・・・永遠を過ごして頂けませんか?」 そう告げれば 「何を言うかと思えば・・・契約がある限り永遠に一緒だろう?」 そう言ってクスリと笑う貴方。 違う。 私の言いたい事は・・・ 「生涯の伴侶になって頂けませんか?」 ピクリと貴方の肩が震える。 「…というのは?」 聞き返して来る貴方の手の指先に口づけ、 揺れる瞳をしっかり見つめる。 「結婚して下さい、マイロード」 跪きシエルの目をしっかり見つめて思いを告げる。 驚いたように目を見開いて固まっているシエル。 しかし、そのまま黙り込んでしまった。 「・・・あの、坊ちゃん?」 沈黙を先に破ったのはセバスチャン。 なかなか返って来ない返事に不安になって、シエルの表情を見ようとすると、 シエルが目を逸らし俯いてしまった。 「坊ちゃ・・・」 「少し・・・時間をくれ」 「・・・え?」 「悪い・・・」 今度はセバスチャンが固まる番だ。 その言葉に思考が完全に停止する。 先程までの甘い空気は消えて、思い空気が流れる。 まさかフラれるとは思っていなかった・・・いや、フラれてはいない・・・筈だ。 時間が欲しいと言われただけで・・・。 そう分かっていても沸き上がってくる焦燥感は止められない。頭が上手く働かない。 「今日はもう寝たい・・・」 「あ、はい・・・お休みなさいませ」 そう言って布団に潜り込んでしまう。 どうして? あんなに愛し合っていたのに・・・ 何故ですか・・・シエル・・・



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