3.Frisson ―感情の高まり
「坊ちゃん」
「…」
「あの歌手が気に入られたのなら、魂の契約をされればよいのです。それが、我々の仕事なのですから」
シエルは瞬きをした。ため息が熱かった。
「改まって何かと思えば、そんなことか…。僕は、お前以外とは契約しない。絶対に」
そう言って、黒い胸を抱き寄せる。
「契約したら、願いを叶えるまでそいつの傍から離れられないんだろう。…お前と離れるのは、嫌だ。お前も…もう僕以外とは…」
「…」
声は段々と寝息に変わり、ルビーのような瞳は柔らかい瞼の奥に眠ってしまった。
青みがかった睫毛の濃い影、白い歯ののぞくセイヨウミザクラの熟しかけた果実、小さく盛り上がった、輝くような指先。
秋毫の微に至るまで完璧なこの美しさが永遠に続くことを思えば、その魂が食せないことなど何だろう。
ひだに埋もれたボタンを探し当て、シャツを脱がせる。ズボンを脱がせて寝ている彼自身に口付け、ポケットから何かごそごそと取り出した。
「ん…はぁっ…」
一時間程後、シエルが目を覚ますと、身体はすっかりあらわになっていた。あちこちにキスマークが残り、金属のリングをつけられたそこは窮屈そうに勃ち上がっていた。
「なっ…」
「人間だったときより、身体の無茶はきくでしょう?」
「…こんな、ものを…」
射精しなければ抜けないリングには、イエロースピネルがちりばめられ、まばゆい光を放っていた。セバスチャンがそこを口に含むと、シエルは声を漏らし、びくんと背中を反らせた。
「…はぁっ…セバス…チャン…」
「もう、こんなに溢れてきましたね…昨日もしたのに、そんなに…四六時中、ここを私に触って欲しいのですか?」
「や…そんな…こと…違っ…」
「違う?私がしなければ、お一人で扱いて、いやらしく楽しまれるおつもりだったのでしょう」
「しないっ…!んんっ…や…ん…セバ…」
「嗚呼、こちらの穴からもこんなに蜜が。坊ちゃんの淫らなお姿を、もっとお披露目致しましょうね」
セバスチャンは窓の前にシエルを連れて行くと、背後から大腿を抱え、脚を開かせた。シエルはもう、ずっぷりとセバスチャンをくわえこんでいる。交歓に喘ぐ自分の姿が窓ガラスに映り、シエルは身体を震わせた。
「や…ぁっ、こんなの、見せるな…っ」
下から激しく突き上げられ、視界がぼやけた。絶頂を迎える寸前で、さっと窓が開いた。
「あっ…は…ああ…っ、セバスチャン…閉、め…」
「坊ちゃん、今、きゅっと締まりましたね」
「し、知らない…っ」
「見られるかもしれないほうが、感じるのですか?」
「そ…ん…あ…あっ!やめ…っ…」
「そう、もっともっと、イイ声を…」
「や…あ…熱い…もう、イクっ…!」
シエルの先端から白いものが放たれ、庭土を汚した。同時にセバスチャンの熱い液体が、どくどくと自分を犯すのを感じた。
「はぁ…っ…。お前…、この、身体になってから、ずっと、中に…」
「もう、中出しでなければ満足できないでしょう?」
セバスチャンはシエルを降ろしてその前に跪くと、リングを外し、小さなそこを音を立てて吸った。
「んっ…ああっ、お掃除、やだっ…」
「おや…キレイにしているだけなのに、まだ元気になるのですか」
「そんな、こと、…う…っ」
「嗚呼、こんなにヒクヒクと動いて」
唇を噛んで、いじわるな言葉に耐える。
「こっちも、キレイにしましょうね」
そう言うと、シエルを四つん這いにさせ、右手で唾液に塗れたものを擦りながら先程まで自分が犯していた場所を丁寧に舐めた。
「そこ…あっ…!お…前のっ…なのに…っ」
「もう、坊ちゃんの味です」
セバスチャンの舌が、ぐちゅぐちゅと敏感な入り口を貪る。
シエルは悲鳴に近い声を上げて、ほとんど透明な液を迸らせた。
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